story1
「お母さんただいま。はい、これ、おみやげ。」
「なあに?」
「人参ウーロン茶。とっても不思議な味、今まで飲んだことのないようなお茶よ。」
和美はそう言って母にクラフト紙に包まれた小さなお茶を手渡した。
「へえ・・・」
恵子は早速急須を取り出し、娘に貰った茶葉の包装を開けた。
「あら、これ、お茶?変わった形ね。」
「うん、お湯は100度の熱いので淹れるんだって。」
人参ウーロン茶、台湾の高山烏龍茶に西洋人参を粉末状にしてまぶして作る。
見た目は緑の砂利のようだ。
「中国、どうだった」
「うん、なんかね、何でもありの国って感じね。今の日本に無くなった熱気みたいなのがまだカオスみたいに至る所にあるって感じ。」
お茶を湯のみに注ぎながら、中国の土産話が始まった。
「どこに行ってもすごい人なのよ、田子坊っていうところがあってね・・・」
「あら、本当に不思議な味。のどの奥にじわーっと甘みが残る感じ?」
「でしょ?それでね・・・」
娘の話は延々と続く。
何度淹れてもいつまでも味が消えないお茶とともに・・・