六、四国遍路の旅(9)苦しいときは声を出す
この旅でいつもハッとすることがある。
それは出会った方々の人に対する心遣いが隅々まで行き届いていることだ。
「お接待」
耳慣れない言葉ではあったが、この言葉の意味を行く先々で思い知らされた。
この日偶然おヒゲさんとメガネさんと一緒に宿し、翌日3人で16キロの山道を歩くことになった。
すごい山道である胸突き八丁ばかり。
話しは変わりこの7月、グループで合宿をした。
班長の僕は一日中号令がけだ。
「気をつけ!」
「休め!」
「グズグズするな!」
「走れ!」
本当につらいときは大声を出しなさい。
疲れたら返事を大声でしなさい。
いつも先生に言われていてもわかったようなわからないような・・・
でもこの山道を越えるにはどうしよう。
思い切って声を出してみよう。
「もうすぐです!」
「元気出してください!」
「滑ります!」
でるでる、声とともに元気が。
お坊さんより僕の方が元気だった。
托鉢の精神を養うために出たこの旅で、今までいろいろと教わったそのお返しをお坊さん二人にできた気がする。
「グループの名誉にかけて受けた恩は必ず倍にしてお返ししなさい。」
先生のお言葉が頭をよぎる。
倍にはなっていないが・・・元気を出していただいて山道を登った。
この山中に柳水庵という寺?小屋?があった。
水は昔弘法大師が杖をたてて出したというだけあっておいしい。
頭からかぶって靴も脱いで足にも水を含ませベンチで休む。
「暑いですねえ、どうぞこちらへ」
びっくりした。
(写真はイメージ。柳水庵ではありません)