中国茶的日々

2005年に上海田子坊で中国茶の店『臻茶林』を始める。北京南鑼鼓巷、浙江省烏鎮、江蘇省天目湖に支店。

九星市場の終焉—カオスが駆逐されて行く上海

ついに来たXデー。

九星市場は上海最大の、おそらく全国規模でも有数の建材市場。

2㎢くらいの敷地にびっしりと店が並んでいる。

中にはホテルレストラン用品市場、食料品市場、お茶市場、照明や内装、家具、家をたてたり買ったり店を開いたり、そういうときにここにくれば何でもそろう市場。

取り壊しの声を聞いて数年経ったが、ついに期日が確定した。

 

来年の春節前後には封鎖される。

 

いまここに行くと、路上に設置されたスピーカーからまるで映画の中の未来都市のような気にさせるアナウンスがきこえる。

「みなさん、ただちに避難してください。このスペースコロニーは50時間後に破壊されます」みたいな。

内容は「このエリアの住民の衛生環境を向上させるため、街を作り直すことが決まりました。A地区は何日から取り壊し開始、B地区は何日から・・・ついては速やかに退去しろ。抵抗しても無駄だ。」という感じでしょうか。

 

市場の中は確かに前近代的でごちゃごちゃしたと建材市場も地域の食堂もジャンクフードも魚屋も肉屋も八百屋も服屋も靴屋も電気屋も水道屋もペンキ屋もお茶屋も雑貨屋もなに屋もかに屋もあり、カオスの中国を見ることができたのですが、

最近街の中からどんどんこういうカオスが消えています。

あとにはお決まりの、

高層オフィスビルに下はショッピングモール、ホテルやレストランも配備してマンションなんかも建てちゃったりして、

株主さんたちの思惑が見え見えです。

あ、こんな大きな市場なのに公設ではないんです。

 

今まで家賃を何年も納めて来た店子たちは、放り出される。

勝手に次の場所探してさっさと引っ越せ、と言わんばかり。

でも誰も文句は言わない。

何年も前から取り壊しの通知はあったし、家賃も一年一括から半年一括に移行してそれとなく雰囲気を知らしめていたから。

もっとも、楯突いても政府ぐるみの計画だから勝ち目はないし、

そんなこと考えている暇があったら早めにいい場所探して移るにこしたことはない。

目先の利益に敏感なお国柄なので、なるべく無駄なことをしません。

 

街はどんどんきれいになって行く。

でもそんな風に人の心はきれいになって行かない。

自分の心がきれいだと信じている人はときにあり得ない自分の心の中のドロドロした部分に出会い、うろたえふたをしながらも抑えきれない部分が溢れ出してしまい、変態行為として現れる。

これから中国も変態が増えて行くのかな。