六、四国遍路の旅(7)四国
一番霊山寺。
お遍路さんは白い上下を来て杖と傘を持つ。
僕は買えないのでTシャツに大きなリュック。
何しろ人が多いので、すぐに出る。
三番の金泉寺でお参りしていると、一人の遍路の女性が近づいてきて、「お接待です。お昼にうどんでも食べてください。」と千円くださった。
びっくりして納経所へ行き住職さんにお話ししたら、そういうときは仏様におさめるお札をお渡しするのだそうだ。
お接待の意味を考えながら、しばらく庭の草取りをお手伝いさせていただいた。
四番五番と廻っているうちに雨が降ってきた。
雨宿りに駆け込んだのが、消防署の軒下だった。
バスで行った方がよさそうなのでしばらく待っていると、所の方が珈琲とお菓子を差し入れてくださった。
六番安楽寺で宿を借りる事にした。
大きな宿坊のあるお寺だ。
一昨日から風呂にも入らず固い床で寝ていたので、ここの大きな浴槽に浸かるとたちまち良い気分になった。
風呂で泳ぎながら都の西北など歌っていると、ご飯ですと呼ばれた。
翌朝、荷物をまとめて出発すべく玄関まで運んだ。
一泊三千八百円である。
全財産を調べてみると、三千七百七十円しかない。
南無三!
こういうときこそ笑顔を忘れてはいけない。
向こうから奥様がいらっしゃる。
「出発するんですか?実はうち明日お祭りがあるので、お手伝いしてもらうと助かるんやけど。」
やった!
一も二もなく承知して、また荷物を奥に運び込んだ。
安楽寺ではあらゆる仕事をした。
陽気な食事係のおばちゃんたちと準備や後片付け、庭で竹をとったり草をむしったり。
当日は何百人も泊まりにきて、目の回る忙しさだった。
広くない参道に出店がぎっしりと並び、奥で阿波踊りをしていた。
見物する余裕もなかった。