story3
幼稚園の始業の鐘が鳴ってしばらくして、拓也は意気揚々と教室に戻ってきた。
「拓也君、何してたの?」
拓也は得意になって先生を遊具保管場所へ案内した。
休み時間、仲間と積み木遊びをしていた拓也は始業準備の鐘を合図にみんなで片付け始めた。
子供の頭ほどある大きな積み木を、壁沿いに積み上げて片付け終了。
教室に戻ろうとしたとき、ふと『この積み方じゃ地震が来たときに倒れて危ないな』と思いたち、一人残って積み上げた積み木を床いっぱいに並べ直した。
これで積み木が崩れて誰かが怪我をすることもない。
「拓也君、どうしてこんなことしたの?」
足の踏み場もないほどに床いっぱいに広げられた積み木を見て、先生は拓也を責め始めた。
先生の反応は拓也にとって予想外だった。
みんなの安全のために授業時間が始まっても残って積み木を床に並べたのに、
どうして先生はこんな怖い顔で怒るんだろう?
釈明が喉で嗚咽にかわり、
止まらない悔し涙が拓也の袖をびしょびしょにした。