story2 ハーブティー
「いくぞー」
父は竜平にボールを投げた。
「あっ!」
竜平が取り損ねたボールが花壇の中に消えた。
「へたくそー!」
そういいながら父は花壇に向かい、竜平と一緒にボールを探し始めた。
「父さんがコントロール悪いからじゃない!」
天気のいい日曜日、家族で郊外の公園に来て父とキャッチボールをしている。
「ハーイ、休憩。お茶の準備ができたわよー!」
簡易テーブルの上には母の手作りチーズケーキとハーブティーが置かれていた。
「えー、僕コーラ飲みたい!」
「だめよ、ウチはそういうの買わないの!」
軽く汗をかいた身体にハイビスカスの酸味が意外と心地よい。
氷砂糖のすっきりした甘みが体力の回復を加速するように感じた。
めまぐるしい都市生活の週末に竜平はそんな子供の頃のことを思い出していた。
会社勤めの彼は、営業マンとして日々顧客回り、 暑い夏も背広を着て汗をかきながら一軒また一軒とお得意様を訪問する。
昨日の訪問先でたまたまハーブティーを出され、 帰りがけに材料を調達し今朝は久しぶりに昔母の淹れてくれたブレンドを自分で再現してみた。
今日は天気のいい日曜日。
久しぶりに公園にでも行ってみようかな。