六、四国遍路の旅(1)東京
寮を出て三日目。
出発のときから降り続いている雨は一向にあがる気配はない。
二日間、30キロの荷を背負い都内をうろつき回ったが、まだ勝手がつかめない。
荷物はだんだん重くなり、気持ちも沈んで行く。
出がけにいただいたたくさんのおにぎりも底をついた。
まだ東京を出られない。
今朝から何軒か廻ってみたが駄目だ。
神社の軒下で雨宿りをしながら、後輩たちがくれたビスケットで朝食。
あまり食欲がない。
鳩がきた。
食卓はにぎやかな方がいいので、砕いてやる。
するとどんどん増えてきて、雀までやってきた。
足がしびれたのでひょいと立ったらみんな逃げてしまった。
じゃあ行こうかと、目の前の家に声をかけたら神主さんのお宅だった。
私:おはようございます
どうぞ
遠くから声がする。
障子で仕切られていて見えないが、かまわずふすまキャラバンの主旨をお話しした。
ちょっと見てくれ
声が近づいて来たときはドキドキした。
教室の押し入れ4枚と洗面所の壁紙のご注文。
ありがたい!やっと仕事をさせていただける。
お昼にはそばを、三時にはアイスクリームとお茶を差し入れしてくださった。
昨日までの八方ふさがりの心境が一転して天国にいるようだ。
あとで伺ったところによると、この教室は今年中に取り壊す予定になっているそうだ。
仕事を終え、お金をくださる時、なぜすぐ壊す部屋のふすまを僕に張りかえさせてくださったのか聞いてみた。
君を応援したくて
神主さんはおっしゃった。